東京高等裁判所 昭和26年(う)3300号 判決
第二に、論旨は松本昭代は接客業を営むものであるから同人との契約については地代家賃統制令の適用がないと主張するものと解される。なるほど同令第二十三条第二項第六号によれば旅館、貸席、料理店、喫茶店等宿泊、遊興又は飲食の用に供する建物については同令の適用のないことは明らかである。ところで、本件の記録に就いてこれを見ると、原審証人小野正則の供述中に、「松本昭代の職業は何か」という問に対し「パンパン屋です」という答があるのであつて、これによると、あるいは右松本は俗にパンパン屋と呼ばれるようなことを業としている者であるのかもしれない。しかしながら、パンパン屋という俗語は、要するに婦女に売淫をさせることを業とすることを意味するものであつて、いうまでもなくそれは法の禁ずるところの業態である。かくのごとき違法な目的をもつて建物を使用することが地代家賃統制令第二十三条によつて特に同令の適用から除外されているものとは解せられない。もつとも、実質においてこの種のことを業とするものであつても、同時に料理店等の正規の許可を受けている場合においては、その面からして同令の適用を免れることはあるであろう。しかし、原審の証人松本昭代に対する尋問調書によると、同人は職業を「無職」と答え、さらに「家では何か商売をしているのか」という裁判官の問に対し「別に………私には夫があるのです」と答え、続けて「それでは夫は何をしているのか」と問われて「別に何も致しておりません」と答えている。もし同人又はその夫が少くとも表面上料理店その他の許可を受けていたものとすれば、この際同人としては当然そのように答える筈であるから、このことによつても同人らがかかる正規の営業許可を受けている者でないことは明らかであるといわなければならない。そうであるとすれば、本件の建物は地代家賃統制令第二十三条第二項第六号に該当する建物であるとはいえず、従つて同令の適用を免かれないものといわざるをえないから、この点に関する主張もまた採用することはできない。これを要するに論旨はいずれも理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)